
sankei.com · Feb 26, 2026 · Collected from GDELT
Published: 20260226T063000Z
衆院選で自民党が圧勝し、花付けを行う首相で同党総裁の高市早苗(左から2人目) =2月8日、東京・永田町の党本部 (相川直輝撮影)総合雑誌の「底力」といえるだろう。短期決戦となった衆院選の選挙期間中に発売された3月号の論壇各誌には、確かな情報と分析にもとづく、説得力のある論考が並んだ。発売の時点で選挙結果は出ていない。だが、衆院選と絡めた特集の多くが、自民党が勝利し高市早苗政権が続くとの予測のもと、選挙後でも十分に読み応えのある構成になっている。中でも『文芸春秋』の「忖度(そんたく)なき提言 高市首相の経済政策」と題した座談会が読ませる。選挙後に高市政権が直面する日本経済の諸課題について、4人のエコノミストらが多角的に論じている。話題の中心は、インフレや円安が進む現在の状況に、どう対処すべきかだ。みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔によれば、以前はドル安だと円高になったが、「ドルも円も足並み揃(そろ)えて下落していく時代に入った可能性」があるという。こうした局面では、経済にしろ安全保障にしろ何でも米国に頼り切るのではなく、同じ価値観を持つ国に「分散」させる意識を持つことが大切だと、唐鎌は説く。BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎も同じ意見だ。「リスクヘッジをするための『分散』投資が、資産運用だけでなく、内政・外交、安全保障、経済政策でも必要になってくる」と指摘した。話題は高市政権が経済活性化策の目玉に掲げる「重点投資対象17分野」にも及んだ。対象となった人工知能(AI)・半導体や造船など17分野には、来年度予算案で計20兆円規模の巨費が投じられる。内閣府のAI戦略会議座長を務める東京大学大学院教授の松尾豊は「成長が期待されるところにきちんと効率的にお金を送り届けるための仕組みを同時に構築する」必要があるとした。一方、消費税減税には4人とも慎重な立場だ。医療経済学が専門の慶応大学教授、伊藤由希子は「財政健全化こそ、最大の国家安全保障」とし、財源確保の見通しがないまま与野党が「減税合戦」を繰り広げていることに危機感を示した。外交や安全保障政策を考える上では、『Voice』の特集「偽りの平和国家・日本」が参考になる。特に防衛大学校名誉教授、武田康裕の論文「政府は在外邦人を守れるのか」は必読だ。武田はまず、台湾有事を巡る高市の「存立危機事態」発言は「日米同盟の連携を再確認したにすぎない」とした上で、政府方針を明確にしたことにより、中国の台湾への軍事侵攻を「抑止する効果をもつ」と指摘する。武田によれば、従来の「曖昧戦略」は中国からみて日米介入の不確実性が高いため、国家主席の習近平が「リスクを回避しようとすれば」有効だが、「リスク受容の認識を抱いていれば」機能しない。2027年に任期満了となる習が「リスク受容」に傾く可能性は高く、日米介入の意思を示した高市発言は「抑止の論理に照らせば適切なシグナリングであった」と、武田は解説する。それでも中国が武力行使に踏み切る恐れは十分ある。問題はその際、台湾に近い沖縄の先島諸島の住民らと、中国にいる約9万人、台湾にいる約2万人の在留邦人、さらには仕事や観光で台湾を訪れる年間130万人以上の短期滞在者をどう守るかだ。武田は「自衛隊の防衛出動と国民保護や在外邦人の保護を同時に見据えた対応が必要」だとし、早急に検討するよう政府に求めている。『正論』の企画「保守するための解散・総選挙」と「高市首相の進む道は参政党が目指す道?」も、編集部の工夫と力量を感じさせるものだ。今後の政局のキーマンにもなるであろう日本維新の会共同代表の藤田文武と参政党代表の神谷宗幣を登場させ、対談やインタビュー形式で本音に迫っている。藤田は政治学者の岩田温との対談で、自公連立時代の公明党が「ブレーキ役」だったのに対し、維新の役割は「アクセルを踏む」ことだと強調した。特に憲法改正では、戦力不保持を定めた9条2項の削除に向けた議論を「私たちが引っ張っていかなければいけない」と明言した。一方、神谷は元自民幹事長でジャーナリストの石原伸晃の質問に答え、抑止力としての核保有の議論が必要だと指摘する。それを「高市政権にも期待する」とし、「参政党も議論に加われと言われれば喜んで加わっていきたい」と述べた。藤田や神谷が強調したように、安全保障の強化は喫緊の課題だ。国会でのタブーなき議論が求められよう。2人には有言実行を望みたい。衆院解散の直前に立憲民主党と公明の衆院議員が結成した中道改革連合については、『世界』に掲載された中央大学教授(政治学)、中北浩爾の論文「中道改革連合とは何か」が興味深い。中北は、中道の結成が意味するものは「(平成28年結成の)民進党から立憲民主党へと続いた共産党を含む『市民と野党の共闘』、いわゆる野党共闘からの最終的な訣別」であると、冷静に見抜く。基本政策などの主導権を握ったのが立民ではなく、それまで政権与党だった公明であるからだ。以下、中北は「宗教政党として結成された公明党」が、他党との連携などで「国民政党」化を模索しながら、自民と連立するまで失敗し続けた歴史を振り返る。その上で、中道の今後について「(衆院選で)惨敗すれば、最終的に解党を余儀なくされるかもしれない」とみる。果たして中道は「惨敗」した。このほか多くの論客が予測したように、引き続き高市政権が日本のかじ取りを担うことになった。それでも厳しい内外情勢をどう分析するか。今後も論壇の「底力」を期待したい。(敬称略)