
wired.jp · Feb 15, 2026 · Collected from GDELT
Published: 20260215T010000Z
2026年のミラノ・コルティナ冬季オリンピックに伴う排出量について、新たな試算が示された。New Weather Instituteの報告書によると、大会関連排出と主要スポンサー3社による誘発排出を合わせると、将来的に約5.5平方キロメートルの積雪と約3,400万トンの氷河氷の損失に相当する規模になる可能性があるという。一方、これら3社によるスポンサー誘発排出を除外した場合、大会関連排出量による影響は約2.3平方キロメートルの積雪と約1,400万トンの氷河氷の損失にとどまると試算されている。スポンサー契約が生む追加排出New Weather Instituteは英国を拠点とする気候政策系シンクタンクだ。1月に公表されたこの報告書は、Scientists for Global Responsibilityと共同で発表され、「Champions for Earth」の協力のもと、ミラノ・コルティナ冬季五輪がもたらす環境負荷を分析したものだ。また、気候変動の影響を最も受けやすい冬季スポーツにとって、五輪の開催がどのような影響を及ぼし得るのかを検証している。大会関連排出そのものも相当量にのぼるものの、それを上回る規模になり得るのが、主要スポンサー3社との契約によって誘発される追加的な排出量だと、報告書は強調する。具体的には、イタリアの石油・ガス企業Eni、自動車メーカーのステランティス、航空会社ITA Airwaysが五輪を通じて自社製品やサービスの販売を拡大した場合、その増加分に伴う温室効果ガス排出が、大会全体のカーボンフットプリントを押し上げる可能性があると指摘している。報告書では、化石燃料や航空、自動車といった排出量の多い産業を「high carbon(高炭素)」と位置づけている。こうしたスポンサー企業は、五輪で露出が高まれば、排出量の多い商品やサービスの販売拡大を通じて追加排出を生む可能性があるとされる。報告書の試算によれば、高炭素スポンサー3社との契約によって誘発される排出量のうち、半分以上を占めるのがEniで、これにステランティスとITA Airwaysが続く。企業の排出強度やスポンサー契約額の推定には不確実性があると断りつつも、報告書は、大会への関与によって各社が得ると見込まれる追加的な売上効果が、二酸化炭素換算で約130万トンの排出に相当する規模になり得ると試算している。この数値は、スポンサー排出を除いた大会関連排出量(約93万トン)を約40%上回る規模にあたり、スポンサー契約に起因する排出が五輪全体のカーボンフットプリントを押し上げる可能性を示している。気候研究に基づく換算では、大会関連排出により将来的に約2.3平方キロメートルの積雪と約1,400万トンの氷河氷の損失に相当するとされる。これにスポンサー誘発排出を加えると、さらに約3.2平方キロメートルの積雪と2,000万トン超の氷河氷に相当する影響が上乗せされる計算になる。報告書は、こうした構造を踏まえ、冬季五輪が称揚する競技環境と、その運営・資金調達の仕組みとのあいだに乖離が生じていると指摘する。スポンサー各社の見解分析結果を受け、Eniの広報担当者は『WIRED』の取材に対し、同報告書は大会に伴う排出量に対する同社の寄与を偏ったかたちで推計していると反論した。そのうえで、「大会運営に使用されるEniの燃料の90%以上は、再生可能な原材料に由来するものです」と説明。五輪への支援は、主としてエネルギー製品や関連サービスの提供に限られており、新たに気候変動を悪化させる活動を生み出すものではないとの見解を示した。ただし、報告書が算定しているのは大会会場で使用される燃料そのものではなく、スポンサー契約によって増加すると見込まれる製品・サービスの販売に伴う排出量である。ITA Airwaysも取材要請に対し、「持続可能性はITA Airwaysの成長戦略の中核です」とコメント。燃費効率の高い新型機材への更新や、持続可能な航空燃料(SAF)の活用計画を挙げ、自社の環境対応を強調した。一方、大会組織委員会(ミラノ・コルティナ2026財団)は、五輪開催による環境への影響についての取材に対し、コメントを控えた。ステランティスも、五輪に関連する自社のサステナビリティ施策についての照会に応じなかった。冬季スポーツを直撃する気候危機地球温暖化の影響を受けやすい冬季スポーツは、年々その存続が危ぶまれている。数字は、すでに進行中の変化を示している。報告書によると、過去5年間で開催国イタリアでは265のスキー場が失われた。2030年冬季五輪の開催を予定するフランスでは、アルプス地域を中心に180以上のスキー場が閉鎖されたという。スイスでも55基のスキーリフトやケーブルカーが運行を停止した。こうした状況のなか、冬季五輪は人工雪への依存を強めていると指摘されている。また、IOCの依頼を受けた研究によると、現在と同程度の排出が続いた場合、冬季五輪を開催できる世界93カ所の候補地のうち、2050年代に「気候的に開催が可能」と見なされるのは52カ所にとどまる。2080年代には、その数は46カ所まで減少すると予測されている。IOCは2021年、五輪開催に伴う排出量を2024年までに30%、2030年までに50%削減する目標を掲げたと説明し、2024年の目標は達成したとしている。ただし今回の報告書は、スポンサー契約に起因する排出が公式集計に十分反映されていない可能性を指摘している。持続可能な五輪への道「実際の山々を訪れれば、積雪が失われ、氷河が融解していることは明らかです」と、報告書の筆頭著者であり、Scientists for Global Responsibilityのディレクターを務めるスチュアート・パーキンソンは語る。その一方で、「冬季スポーツは、自らの取り組みを見直し、環境負荷の高いスポンサーとの関係を断つことで、解決の一端を担うことができると確信しています」と述べた。報告書では、高炭素のスポンサー企業が関与していなければ、ミラノ・コルティナ五輪の総排出量は、2018年平昌大会を約22%下回る水準に抑えられていたと試算している。また、新型コロナウイルス対策によって観客移動がほぼゼロとなった2022年北京冬季五輪を例外とすれば、2026年大会は近年の冬季五輪のなかでも、比較的持続可能性の高い大会のひとつに位置づけられた可能性があるという。今回の大会組織委員会は、既存インフラの再利用を進めることで排出削減を図っている。新たに建設された恒久的な競技施設は2カ所にとどまり、2018年平昌大会の6カ所、2014年ソチ大会の14カ所と比べても建設規模は抑制されている。報告書はさらに、排出量の多い上位5社のスポンサー契約を低炭素企業に置き換えた場合、資金面に大きな影響を与えることなく、二酸化炭素換算で約140万トンの排出削減が見込める可能性があると試算している。正確な数値の算出は難しいとしながらも、New Weather Instituteの共同ディレクターを務めるアンドリュー・シムズは、「多大な温室効果ガスを排出する企業をスポンサーに抱えている限り、五輪は持続可能とは言えません」と語った。(Originally published on wired.it, translated by Miki Anzai, edited by Mamiko Nakano)※『WIRED』によるオリンピックの関連記事はこちら。カーボンニュートラルの関連記事はこちら。Related Articles競技にも多大な影響、アルペンスキー・ワールドカップで起きた“番狂わせ”の真相雪不足に苦しむ欧州のリゾートは「スキーに頼らない未来」を模索しているCOP27で示された気候変動対策について知っておくべき「5つのポイント」と、その実現可能性雑誌『WIRED』日本版「THE WIRED WORLD IN 2026」好評発売中!未来の可能性を拡張するアイデアとイノベーションのエッセンスを凝縮した、毎年恒例の大好評企画の最新版「THE WIRED WORLD IN 2026」。世界中のクリエイターや実業家、科学者など40名超のビジョナリーが、テクノロジーやビジネス、カルチャーなど全10分野において、2026年を見通す最重要キーワードを掲げた総力特集! 詳細はこちら。