
nikkei.com · Feb 16, 2026 · Collected from GDELT
Published: 20260216T023000Z
/ ナショナル ジオグラフィック2026年2月16日 5:00これは2025年に宇宙で起こったことの中でも最大の「ミステリー」と言えるだろう。ブラックホールはどうやって恒星を破壊したのか? そしてどのようなブラックホールであれば、そんなことが可能なのだろうか? 世界中の天文学者たちが、25年7月2日以降、この"未解決事件"の解明に取り組んでいる。その日、彼らのもとに、米航空宇宙局(NASA)のフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡がガンマ線を検出したとの知らせが届いた。ガンマ線は、知られている中で最もエネルギーの高い光の形態であり、ブラックホールが恒星などの天体を破壊する際に現れる典型的な兆候として知られている。莫大なエネルギーが放出されるからだ。突発的に起こる宇宙からの高エネルギー放射である「ガンマ線バースト」は通常、平均で1秒から30分程度しか続かない。ところが、25年7月2日の放射は7時間も継続し、観測史上最長のガンマ線バーストとなった。謎を解くためのもうひとつの手がかりは、中国と欧州が共同で開発した観測衛星「アインシュタインプローブ」によってもたらされた。その前日に、宇宙の同じ位置から発せられるX線が明るさを増すのを観測していたのだ。通常、宇宙での爆発は最もエネルギーの高い光から始まり、徐々に明るさを失っていくもので、逆はあり得ない。1973年にガンマ線バーストが発見されて以来、今回のような現象は一度も確認されたことがなかった。「だからこそ、これはだれも見たことのない非常に珍しい現象と言えるのです」と、ローマ・トルヴェルガータ大学の天体物理学者エレオノーラ・トローヤ氏は言う。今回の星の破壊がどのように起こったのかについての有力な理論はいずれも、以下で紹介するように、これまで観測された例のないシナリオを提唱している。このガンマ線バーストについてわかっていること「GRB 250702B」と名付けられた今回の不可解な現象については、査読前の論文を公開するサイト「arXiv」に、これまでに少なくとも10本の論文が投稿されている。そのうちのいくつかはすでに査読付きの学術誌にも発表されている。科学者たちは、宇宙のものも地上のものも、ありとあらゆる手段を講じて真相の究明に取り組んでいる。この現象を追跡してきた科学者たちの見解は、恒星の破壊によって、現場からは光に近い速度で粒子のジェットが噴き出し、それがガンマ線を発生させたという点で一致している。しかし最大の謎は、「そもそも最初にジェットを発生させたのは何だったのか、その中心には何があり、何がジェットにエネルギーを与えているのか」ということだと、オランダ、ラドバウド大学の天文物理学者アンドリュー・レバン氏は言う。そしてこの点については、科学者たちの意見は分かれている。内側から星を食べるブラックホール説一部の科学者は、今回のガンマ線信号は、太陽の数倍から30倍の質量を持つブラックホール(これまでに観測された中で最小規模のブラックホール)から観測されるものとよく似ていると指摘している。この「お手頃サイズ」のブラックホールが、外側の水素層をほぼ失った「ヘリウム星」と合体した場合、ゾッとするような現象が起こる。ブラックホールは恒星を内側に入り込んで食べ始め、それによって高エネルギー粒子と光のジェットを生み出すと、科学者は言う。星が食べられてしまったあとには、ブラックホールだけが残される。学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に25年11月14日付で発表した論文で、この仮説を裏付ける証拠を提示した米ルイジアナ州立大学の天体物理学者エリック・バーンズ氏はこう述べている。「どんなに荒唐無稽に思えても、宇宙ではこうした現象が起こっているはずです。まだ観測によって決定的な証拠が見つかっていないだけなのです」超新星が観測されていたなら、つまり、宇宙に向かってその欠片が吹き飛ばされる様子が確認されていたなら、このシナリオを裏付ける決定的な証拠となったはずだ。しかし、今回のガンマ線バーストが起こった銀河には分厚い塵が存在し、さらに地球から見るとちょうど天の川銀河とも重なっているため、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡をもってしてもそれを観測できなかった可能性がある。星を引き裂く謎多きブラックホール説また別の科学者は、現場の証拠からは、中間質量ブラックホールが犯人として浮かび上がると主張している。この説が正しければ、科学的に非常に興味深い発見となる。なぜなら、宇宙にあるブラックホールの大半は、恒星質量ブラックホールあるいは超大質量ブラックホール(太陽の10万倍以上の質量がある)だからだ。その中間にあたる、太陽質量が100倍から10万倍のブラックホールはそれよりもはるかに見つけにくい。このシナリオにおいては、宇宙をさまよう中間質量ブラックホールの強力な重力が、白色矮星(太陽に似た恒星が寿命を迎えた天体)を引き裂いたとされる。恒星を内部から爆発させるという仮説に比べれば、さほど劇的な展開ではない。この説明の問題点は、フェルミ望遠鏡が観測したガンマ線の明るさの変動が、いまだかつて恒星質量ブラックホールとの関連でしか確認されたことがないという事実だと、バーンズは言う。「大きい天体ほど、ある現象がその全体に影響を及ぼすのに時間がかかります」と氏は説明する。これはつまり、光がブラックホール全体を横切るのに必要な時間よりも速い光の明滅が観測されることはあり得ない、ということを意味する。フェルミ望遠鏡が1秒単位のタイムスケールで変動を観測していたことを踏まえると、これはブラックホールが比較的小さいことを示唆している。一部の科学者が、中間質量ブラックホールの可能性は排除できないとしている一方、「わたしに言わせれば、あまりに非現実的な話です」と、バーンズ氏は述べている。マイクロ潮汐破壊現象説また別の選択肢としては、恒星質量ブラックホールが自身の連星を引き裂いた、というものもある。この「マイクロ潮汐破壊現象」と呼ばれるシナリオは、通常は超大質量ブラックホールによって引き起こされる。こちらの方が、中間質量ブラックホール犯人説よりも説得力があると、NASAゴダード宇宙飛行センターの研究者で、バーンズ氏とともに「内側から星を食べるブラックホール」説にまつわる研究を主導したエリザ・ネイツ氏は言う。ただし、信号の素早い変動は、ブラックホールが恒星と合体し、その後これを破壊したという考えを裏付けていると、ネイツ氏らは述べている。今のところ、ブラックホールの大きさや"星殺し"の方法についての議論は決着がついていない。天文学者らは現在、恒星の破壊の跡をX線や電波で観察し、何が起こったかを示すさらなる手がかりを探している。「宇宙で起こる新しい現象を目にするたびに、自分たちの理解がいかに浅いかを思い知らされます」とトローヤ氏は言う。「そのおかげでわれわれは、宇宙に対して抱くべき畏怖の念を思い出すのかもしれません」文=Elizabeth Landau/訳=北村京子(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2026年1月15日公開)【関連記事】・史上3つ目の太陽系外から来た天体、なぜCO2や電波出す? 残る謎・「禁じられた」ブラックホール同士の合体を検出、科学者は困惑すべての記事が読み放題有料会員が初回1カ月無料 関連リンクナショナル ジオグラフィックの関連記事観測史上最も明るい宇宙の爆発現象を検出、1万年に一度の幸運地球から一番近いブラックホールを発見、連星系に「禁じられた」ブラックホール同士の合体を検出、科学者困惑ギャラリー:ブラックホールの謎に迫る宇宙の画像 6点ナショナルジオグラフィックは1888年に創刊し、大自然の驚異や生き物の不思議、科学、世界各地の文化・歴史・遺跡まで1世紀以上ものあいだ、地球の素顔に迫ってきました。日本語版サイトから厳選した記事を掲載します。こちらもおすすめ(自動検索)「禁じられた」ブラックホール同士の合体を検出、科学者は困惑2025年8月25日史上3つ目の太陽系外から来た天体、なぜCO2や電波出す? 残る謎2025年12月29日過去25年間で最も偉大な科学のブレイクスルー、物理学・天文学編1月19日「静かな天体」ではないブラックホール ペアで回転、磁場の強さ変化2025年12月13日#エリック・バーンズ#アインシュタインプローブ#エレオノーラ・トローヤ#エリザ・ネイツ#北村京子#ミステリー#ElizabethLandau#arXiv